Hajime notes

謎を食べて生きる

詩「和解」

 先日、久々に、ゼミへ。I平さんの発表、差別論。その後恒例の食事会、酒も。結婚の話題。帰って、なぜか、打ちひしがれる。言葉が胸に痞(つか)える。恋人に電話。断片的な言葉。「書いてみる」。詩と書いたが、詩なのか、詩が何なのか、実の所は皆目わからない。


 *


和解

 裏切りの感覚。

 永遠の約束。そんなの不可能に決まってる。だって、裏切ってしまえば、永遠ではない。

 ある種の蜜の味がするようだった。知ってる。この味。懐かしい。

 昔、子供の頃、風邪のときに決まって見る夢。選ばれた者は、殺される。断末魔の叫び。グルグルと渦が巻く。潰されるか、引き裂かれるか。

 本当は、そんなふうにできている。それを、知っていた。

 でもその「本当」は嘘なんだ。だから、忘れなきゃいけない。それなのに、また、思い出そうとする。

 きっとあなたもそのような世界を知っている。私はそう思ってしまう。それで、怖れる。あなたも、きっと、忘れなきゃいけなかったから。

 だから、私は、一人で、思い出そうとする。知らない。貴女のことは。うっ、うっ、涙が出てきてしまう。

 裏切りの感覚がある。一人で見ようとすることには。

 私は和解する。だからもう、一人で見ない。私は泣く。私は涙も見せる。

 永遠? それがそうなら、それは裏切りえない。だって、そうだろう? 私は泣く。それが嘘になってしまうから。

 だって、そうだ。そこには誰もいない。裏切りもなく、永遠もない。うっ、うっ、私はまた、泣いてしまう。

 ここには跳び越せない断絶がある。私の言葉は嘘だ。

 向こうからやって来た。私は迎えた。私はこの身体と結びついた。自然に降り立った。

 私の言葉は嘘だ。私の言葉は嘘になってしまう。私は知っている。私は自分でしたんじゃないんだ。だから私の言葉はあなたに届かない。

 私は知っている。あなたの言葉は本当だ。でももう私は一人で見ようとしない。降りて、結びついた。

 私は祈る。われわれが本当のことを知りますように。永遠と和解しますように。愛することができますように。